最近、「最高の組織作り」というポッドキャストをよく聴いています。
この番組では、ベンチャー企業の経営者やマネージャーが、どのようにして組織をよくしていくか、言葉でどう伝えていくかといったテーマを率直に語っています。
https://www.cultibase.jp/radios/venture-radio
最初は何気なく聴き始めたのですが、回を重ねるうちに、私自身の仕事や立場と重なる部分が多く、心の奥で「そうなんだよな……」と何度もうなずいている自分がいました。
特に印象に残ったのは、「全社総会でどんなメッセージを語るか」「立場の異なる人にどのように届けるか」「対話をどう実現するか」といった話題です。
これはまさに、今の私の悩みや違和感に直結していました。
「遠さ」を感じる職場で
私は今、会社との間に「遠さ」を感じています。
分社化によって新しい会社に所属することになり、業務や体制もようやく落ち着いてきたとはいえ、組織としての方向性や、「私たちは何を大切にして進んでいるのか」が、いまひとつ見えにくくなっていました。
もちろん、社内ポータルを通じた情報発信はあります。けれども、それだけでは「誰が、どんな思いで語っているのか」が伝わってこない。文字情報は残っても、温度がないのです。
そんな状態が続くと、知らず知らずのうちに「私はこの会社の一員として、どこへ向かっていけばいいのか」という迷いが募ってきます。そして、働くことへの熱量が少しずつ冷めていくような、そんな感覚を抱いていました。
上司のひと言に、心が動いた
そんなある日、年間の個人目標設定のための会議がありました。個人目標設定をするためには、まずは部署内での方向性を共有する必要がありますが私の上司がチーム全体に向けて、「我々の部署がこれからどうありたいのか」について話してくれる機会がありました。
その瞬間、胸の奥がじんとする感覚がありました。
「こういうことを、ずっと聞きたかったんだ」と思いました。ある種の安心感というか、これでよいのだと思いました。
語られた内容ももちろん大切でしたが、それ以上に、**“上司が自分の言葉で語ってくれた”**という事実そのものが、私にとっては大きな意味を持っていました。
私たちのチームが何を目指すのか。何を大切にしていくのか。そこに「人の声」が乗った瞬間、急に自分がそのチームの一員として生き返ったような気がしたのです。
上司はMBAホルダー──リーダーの思考と言語化
ふと気づいたのですが、私の上司はMBAを取得している方です。
もしかすると、そのバックグラウンドが今回のような「ビジョンを言語化して伝える」アプローチに強く表れているのかもしれません。
MBAで学ぶことの一つに、**「方針策定と伝達の力」**があります。チームを牽引するには、理念や方向性を言葉で語り、共感を促す力が必要です。戦略だけでは組織は動きません。「人を動かす言葉」こそが、リーダーの最も重要なスキルであるという考え方です。
上司の言葉には、まさにその要素が詰まっていました。
内容も構造も明快で、余計な言い回しはなく、それでいて温かみのあるトーン。言葉の奥に、「自分はこの部署をどう導きたいのか」「何を大切にしたいのか」という考えが、にじみ出ていました。
だからこそ、心に残ったのだと思います。
自分自身への問い──リーダーであることの意味
私は管理職ではありませんが、チーム内ではリーダー的な立場にあります。
業務の中核を担い、メンバーに指示を出すこともある。
でも、あの日の上司の言葉を聞いて、自分は**“語るリーダー”**になれていただろうかと、はっとしました。
チームにとっての「ありたい姿」を、言葉にして伝えたことはあったか。
同じことを何度も繰り返し、伝え続けていただろうか。
正直、私は「伝わっているはず」という思い込みの中で仕事をしていた気がします。
けれども、それはリーダーとしては極めて無責任だったかもしれません。
「言わなくても分かってくれるだろう」ではなく、「伝わっていると実感がなくても、語り続ける」ことが大事なのです。
これは、ポッドキャストで繰り返し語られていたことでもありました。
「言葉にする努力をやめないこと」「何度でも語ること」「相手の立場に合わせて視点を変えること」。
耳では理解していたはずのことが、自分の体験を通じてようやく“腑に落ちた”のです。
伝えることを、あきらめない
「伝える」ことには、手間がかかります。
すぐに成果が見えるわけでもないし、相手がどう受け取ったのかが見えないこともあります。
でも、だからこそ、リーダーには繰り返し言葉を届ける根気と覚悟が求められるのだと思います。
リーダーというのは、「業務を指示する人」ではなく、「方向を語る人」。
その責任に気づいたとき、自分の立場が少し変わったような気がしました。
おわりに
会社に「遠さ」を感じていた私が、上司のひと言に救われた。
その言葉は、きっとMBAで学んだ知見と実践の積み重ねによって、裏打ちされていたのだと思います。
でも、その言葉を受け取った私は、今、**「自分も誰かにとっての声でありたい」**と強く思っています。
言葉には、距離を縮める力がある。
言葉には、人を前に進ませる力がある。
そして、言葉には、組織をつなぎ直す力がある。
これからも、私は「伝えること」の難しさに向き合いながら、でもその力を信じて、少しずつ伝えたい。
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