物流企業って、地味~~~なんですよね。
伝統的にトラックとか、港湾とか、キラキライメージとは程遠いし、男性で、しかも高収入のイメージはないですよね?ね?
でも、昨今の人手不足とか2024年問題とか見ていくと、物流がいかにインフラとして欠かせないかというのはよくわかること。インフラなんですよねえ。だからこそ、業界としては古く、大小さまざまなプレーヤーがいるのではないでしょうか。
それにしても、物流業者のイケてなさといったら身に沁みますね。
ドレー、トラック業者の説明も意味不明だったり、オペレーションも非効率気周りないことは実務でも感じることもあります。そんななかみんな頑張っていることには素晴らしさを感じることもありますが、頑張るだけじゃ、だめなんですよねえ。。。
日本の物流に風穴を開けるべく経営されている「Hacobu」という会社にフォーカスしてみたいと思います。これはDeep Researchの情報です。

株式会社Hacobu:データドリブン・ロジスティクスによる物流情報プラットフォーム戦略と今後の成長見通し
I. エグゼクティブ・サマリー:Hacobuの戦略的評価
1.1. 現状分析:市場における優位性と戦略的ポジション
株式会社Hacobuは、日本の深刻化する物流危機、特にトラックドライバーの時間外労働上限規制(物流の2024年問題)を背景に、単なるSaaS(Software as a Service)提供者から、物流業界の構造的な課題を解決する「物流情報プラットフォーム」へと急速に進化を遂げている企業である 1。
同社の事業基盤は、トラック予約受付サービス「MOVO Berth(ムーボ・バース)」によって確立されている。このサービスは、バース管理システム市場において売上高および拠点数でシェアNo.1を獲得しており 3、累計利用ドライバー数は46万名を超え、これは日本のトラックドライバーの約半数に相当する規模である 2。この圧倒的な市場支配力は、企業間物流の非効率性に関する時空間ビッグデータ(いつ、どこで、どれだけ遅延が発生しているか)を独占的に収集することを可能にし、「Data-Driven Logistics®」の概念を実現するための決定的な参入障壁となっている 2。
財務面およびパートナーシップにおいても、Hacobuは強固な基盤を持つ。2025年5月時点で、累計資金調達額は約56億円に達しており 5、投資家にはArchetype Ventures、Sony Innovation FundなどのVCに加え、三菱倉庫、豊田通商、鴻池運輸といったサプライチェーンの中核を担う大手事業会社が戦略的投資家として参画している 2。これらのパートナーシップは、単なる資金供給を超え、Hacobuのソリューションが業界の事実上の標準(デファクトスタンダード)となるためのネットワーク構築を加速させている。
1.2. 成長戦略の三本柱:データプラットフォーム、AI統合、エコシステム拡大
Hacobuが掲げるGoal 2030「物流情報プラットフォームを創る」に向けた成長戦略は、データ優位性とネットワーク効果を前提とした以下の三本柱で構成されている 2。
- データプラットフォーム化 (MOVO X-Data): 輸配送効率化を実現する共同輸配送支援サービス「MOVO X-Data」を提供することで、個別企業内の最適化に留まらず、企業間・拠点間をまたぐ輸送の全体最適化を目指す 8。これは、非競争領域である物流の効率化を推進する上で最も困難かつ高付加価値な取り組みである。
- AI技術による高度化 (MOVO AI Lab): 豊富に蓄積された運行実績データ(ビッグデータ)を活用し、物流×AIに特化した「MOVO AI Lab」を始動 10。配車管理サービス「MOVO Vista」へのAI配車支援機能の導入など 11、コア業務をAIで高度化・標準化することで、プロダクトの付加価値と顧客体験の向上を図る。
- 総合的DX支援体制: SaaS提供(MOVO)に加え、戦略立案支援(Hacobu Strategy)、基幹システム連携(Hacobu Solution Studio)、および人材紹介(Hacobu Career)という三位一体のソリューションを展開 12。これにより、特に大企業の複雑なDX推進ニーズに対しワンストップで対応し、顧客のSaaS定着率とLTV(顧客生涯価値)を最大化する。
1.3. 結論(投資家視点)
Hacobuは、強固なネットワーク効果を享受し、物流業界の構造改革という巨大な市場機会を捉えている。特に、データ共有・活用を巡る業界横断型の取り組み(未来の物流共創会議、物流ビッグデータラボ)を主導し、中立的な情報仲介者としての地位を確立するソフトパワー戦略は、技術的優位性とともに特筆すべき点である 14。長期的な成長シナリオは、基盤データがもたらすAIの高精度化と、MOVO X-Dataによる企業間連携の本格的な実現に依存するが、実現すれば業界全体のサプライチェーンにおけるインフラ支配力を獲得する可能性が高い。
II. 企業概要と事業基盤の確立
2.1. 企業沿革、経営陣、およびビジョン
株式会社Hacobuは、2015年6月30日に設立された 3。本社は東京都港区に位置し、代表取締役社長CEOは佐々木太郎氏が務めている 3。設立当初より、企業間物流の最適化をビジョンに掲げ、データを武器に企業の物流DX(デジタルトランスフォーメーション)を支援することを事業内容としている 3。同社の中心概念は、輸配送データを可視化し、最適化へと導く「Data-Driven Logistics」であり、「データで『運ぶ』を革新する」ことをミッションとしている 1。資本金は38億円である 13。
2.2. Hacobuが挑む市場環境:日本の物流クライシスと「2024年問題」の構造的課題
Hacobuの成長は、日本が直面する物流の構造的課題、すなわち「物流クライシス」と「2024年問題」に強く関連している 4。物流は社会インフラとして私たちの生活を支えている一方で、現場では長時間労働や非効率な荷待ち・荷役作業が常態化しており、2024年4月からのトラックドライバーの時間外労働上限規制導入により、輸送力不足が深刻化することが懸念されている 9。
Hacobuのサービス群、特に「MOVO Berth」は、政府が推進する「物流革新に向けた政策パッケージ」の中で言及されている「荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルール」への対応において、現場の状況を可視化し、改善を促す基盤として機能している 14。
物流の最適化は、個別企業が単独で行う「個社最適」だけでは限界があり、貨物をある地点から別の地点へ移動させる「輸配送」においては、企業間の連携が不可欠である 18。Hacobuは、物流を非競争領域と捉え、企業の枠を超えて協調し、課題を解決していく場(未来の物流共創会議など)を提供することで 14、業界全体の効率化という高次の課題に挑んでいる。
2.3. 財務基盤と戦略的資金調達の分析
Hacobuは、継続的に大規模な資金調達を実施しており、2025年5月の7億円の資金調達により、累計調達額は約56億円に達している 5。
特筆すべきは、投資家構成の戦略的な意図である。既存投資家(Archetype Ventures、Sony Innovation Fundなど)に加え、新規戦略的投資家として、サプライチェーンの要衝を占める企業が多数参画している。これには、三菱倉庫や鴻池運輸といった大手物流事業者 2、そして総合商社である豊田通商が含まれる 7。
このような大手事業会社からの資金調達は、単に開発資金を確保するだけでなく、Hacobuのソリューションを自社の物流ネットワークに深く組み込み、業界全体におけるMOVOプラットフォームの普及を加速させ、事実上の市場標準化を推進する戦略的な意味合いを持つ。豊田通商との提携では、脱炭素社会の実現に向けたデジタル技術活用が目的の一つとされており 7、これはMOVO X-Data 9 が輸送効率向上を通じてCO2排出量低減に貢献するという、ESG戦略に合致した事業展開を示唆している。大手パートナーの参画は、Hacobuのサービスに対する信頼性を向上させ、競合他社の新規参入を抑制する強固なデータプラットフォーム構築への流れを強固にする。
III. Core Business Model:「MOVO」エコシステムの分析
3.1. MOVO Berth:市場優位性とデータ収集基盤
Hacobuの事業において、「MOVO Berth」はプラットフォーム戦略の「ゲートウェイ」として機能し、確固たる市場優位性を確立している。
MOVO Berthは、荷待ち・荷役時間の削減と物流現場の生産性向上を実現するトラック予約受付サービスであり 16、トラック予約受付システムの市場においてシェアNo.1を獲得している 3。そのネットワーク効果は絶大であり、累計導入企業数は500社を超え、利用事業所数は12,000カ所を突破。累計利用ドライバー数は46万名超に上る 2。この広範な利用実績は、サービス自体の利便性を高め、さらなる利用者を呼び込むロックイン効果を生み出している。
導入企業は、入場予約・入退場受付を通じて、荷待ち・構内滞留時間の可視化と改善が可能となる 16。例えば、日立建機ではMOVO Berthを8拠点で活用し、カメラ認証との連携により待機車両ゼロを実現。荷待ち時間や構内滞留時間をデータで定量的に可視化し、法令対応に向けた基盤を構築した 19。LIXIL物流の事例でも、ホワイトボードによるアナログ管理から脱却し、荷待ち・荷役時間を可視化することで、政策パッケージ「2時間以内ルール」対応に向けた改善体制を構築している 17。
また、MOVO Berthは2年連続で稼働率99.99%を達成しており、社会インフラとしての安定したサービス提供能力を証明している 21。さらに、従来のパスワードに加え、スマートフォンアプリで生成されるパスコードによる二段階認証を実装するなど、物流データという重要な経営資源を取り扱う上でのセキュリティ強化にも注力している 16。
3.2. MOVOシリーズ主要アプリケーションの機能と役割
Hacobuが提供するクラウド物流管理ソリューション「MOVO」シリーズは、バース管理にとどまらず、輸配送プロセスのデジタル化を包括的に支援するアプリケーション群で構成されている。
MOVOシリーズ主要アプリケーションの機能と役割
| サービス名 | 主要機能 | ターゲット課題 | 特筆事項 |
| MOVO Berth | トラック予約受付、入場・退出管理 | 荷待ち時間削減、構内滞留時間解消 | 市場シェアNo.1、利用ドライバー46万人超 2 |
| MOVO Fleet | 車両動態管理、GPSトラッキング | リアルタイム位置把握、運行データ収集 | X-Dataによる共同輸配送支援のデータ基盤 22 |
| MOVO Vista | 配車受発注・管理、案件管理 | 煩雑な配車業務の効率化 | AI配車支援機能を導入 11 |
| MOVO X-Data | 運行データ分析、共同輸配送の改善案提示 | 輸送効率向上、積載率向上、CO2削減 | 拠点間・企業間データ連携を推進 23 |
| MOVO PSI | 生産・販売・在庫管理の最適化支援 | 需給バランスの改善 | データドリブンな意思決定を強化 16 |
| MOVO Driver | ドライバー向けスマートフォンアプリ | ドライバー業務効率化、コミュニケーション支援 | 2023年6月にβ版リリース 6 |
3.3. 製品ポートフォリオの統合と全体最適戦略
MOVOの製品ポートフォリオは、個々のアプリケーションが現場の特定課題(バース、動態、配車)を解決するだけでなく、そこから生成されるデータを一元的に収集し、より高度な全体最適化を目指すデータ基盤の構築を目的としている 8。
特に、MOVO Fleetなどの既存サービスを通じて蓄積された実績データを活用して運行を分析し、企業間の垣根を越えた輸配送効率化を図る「MOVO X-Data」の存在は重要である 8。これは、Hacobuが現場オペレーションのデジタル化(個別最適)から、業界全体の非競争領域の最適化(全体最適)へと戦略の軸足を移していることを示している。
MOVO Berthが持つ46万名を超えるドライバーの利用実績は、Hacobuが日本のトラック物流の「動脈」に関する詳細な時空間ビッグデータを独占的に保有していることを意味する。このデータ優位性が、将来的に高精度なAIモデル(動的ルート最適化や需要予測に基づく自動配車)を開発し、他社の追随を許さない技術的優位性を確立するための揺るぎない根拠となっている。
IV. Growth Strategy 1:データドリブン・ロジスティクスとプラットフォーム戦略(Goal 2030)
Hacobuの成長戦略の中核は、Goal 2030として掲げる「物流情報プラットフォームを創る」の達成であり、企業間の壁を越えたデータ連携を成功させることにその成否がかかっている 2。
4.1. 業界共通プラットフォーム構築のビジョンと必要性
Hacobuは、物流の世界において企業間の連携が不可欠であるという認識に基づき、特定の企業に最適化されたシステムではなく、業界全体で利用可能な共通基盤の構築を推進している 18。このプラットフォームを通じて物流情報を統合し、企業経営層、物流現場、ドライバー、そして社会全般にデータを還元することを目指している 2。
プラットフォームの信頼性維持のため、新経営体制では、物流ビッグデータ活用を加速させるとともに、コーポレートガバナンスおよびデータガバナンスの強化を明確に推進している 3。
4.2. MOVO X-Data:企業間・拠点間共同輸配送支援
2024年9月10日に提供が開始された「MOVO X-Data(ムーボ・クロスデータ)」は、このプラットフォーム戦略の実現に向けた最も戦略的な製品である 23。
MOVO X-Dataは、MOVO Fleetなどの既存サービスで蓄積された運行実績データを基に、非効率な運行や車両を抽出し、拠点間、さらには企業間を跨いだ共同輸配送の改善案をデータ解析によって提示する 9。従来の共同輸配送の検討は、配車担当者へのヒアリングや固定的なデータ分析に基づき、季節変動など柔軟に対応できない課題があった 9。しかし、MOVO X-Dataは、実績データ活用によりスピーディかつ効率的な検証を可能にし、物流コストの大幅削減や積載率向上、およびCO2排出量の低減を期待できる 23。
現在、第1号プロジェクトとして三菱食品と実証実験を推進中であり、同社が全国で運用する3,000台のトラックを対象に、まずは拠点間での共同輸配送を通じた車両削減と環境負荷軽減を目指している 9。将来的には、この成功事例を基に、企業間での共同輸配送の実現を視野に入れている 23。
4.3. 企業間の協調を促すためのソフトパワー戦略
企業間のデータ共有という高いハードルを越えるため、Hacobuは技術的なソリューションだけでなく、企業間の信頼構築と協調体制を促すソフトパワー戦略を展開している。
その一つが、製造業・卸売業・小売業の物流責任者が集まる「未来の物流共創会議」の開催である 14。ここでは、競争関係にある同業や取引関係にある企業同士が、物流を非競争領域と捉え、Hacobuが提供するMOVOのデータを基に、荷待ち時間規制への対応や共同配送の可能性について建設的な意見交換を行う 14。この会議をきっかけに、物流責任者間の交流が始まり、具体的な課題解決の成果が生まれているという。
さらに、業界横断型の取り組みとして「物流ビッグデータラボ」を創設。キリンビバレッジ、スギ薬局、日本製紙、YKK APといった大手企業が参画し、MOVOに蓄積された物流ビッグデータを企業間で共有・分析することで、異業種間での共同輸配送の実現を目指している 15。Hacobuが中立的な第三者(トラスト・アンカー)として機能し、データ分析を代行することで、データの機密性を維持しつつ、企業間の連携を可能にする仕組みづくりを推進している。MOVO X-Dataの実証実験の成功は、業界全体のサプライチェーンの構造をHacobuを中心として再編する可能性を秘めている 23。
V. Growth Strategy 2:AI/R&Dを通じたオペレーション高度化
5.1. MOVO AI Labの始動と研究開発の方針
Hacobuは、中核となるデータテクノロジーへの投資を加速する方針を掲げており 2、物流とAIの融合に特化した「MOVO AI Lab」を2025年9月9日に始動させた 10。
MOVO AI Labの目的は、バース管理(Berth)以外のMOVOシリーズにもAI技術を展開し、物流オペレーション全体の高度化と業務効率化を推進することにある 10。この取り組みの最大の強みは、MOVO Berthの市場支配力とMOVO Fleetが提供する大規模な現場データが、高精度なAIモデルを開発するための学習データとして利用できる点にある。このデータ量は、後発の競合製品が容易に模倣できない、技術的な差別化要因となっている。
5.2. AI配車支援機能の実装と現場での効果
MOVO AI Labの成果の一つとして、配車受発注・管理サービス「MOVO Vista」にAI配車支援機能が提供開始された 11。
配車業務は、熟練担当者の経験やノウハウに依存する属人化しやすい業務であるが、このAI機能は、この構造的な課題を解決し、標準化と効率化を可能にする。この機能は、川崎重工業の現場で既に実証・活用されており、AIによる業務効率化が推進されている 11。AIによる支援は、配車担当者の負担を軽減し、業務の質を安定させる効果が期待される。
5.3. リアルタイムデータとAIの連携による将来展望
Hacobuは、単なる個別業務の効率化を超えた、より高度なサプライチェーン最適化を視野に入れている。MOVO X-Dataによって企業間データが統合され、MOVO AI Labで分析されることで、複雑な需給予測や、リアルタイムの交通情報、気象データといった外部情報も取り込んだ動的なルート最適化が可能になる 23。
さらに、生産・販売・在庫管理の最適化を支援する「MOVO PSI」 16 のように、AIが予測した物流のデータを商流側(生産・販売)にフィードバックする仕組みを構築することで、サプライチェーン全体を通じた意思決定の精度向上が期待される。
Hacobuが実行している戦略は、ネットワーク効果(MOVO Berth)が生み出すデータ優位性を、AI開発(MOVO AI Lab)に再投資するという「データ・フライホイール」の成功的な起動である。データ量とAI精度の相互作用により、提供されるソリューションの質が向上すれば、それがさらに新規顧客を呼び込み、データ量がさらに増大する、という自己強化型の競争優位性が確立される。
VI. エコシステム拡大戦略:コンサルティング、SI、人材
Hacobuは、SaaS提供という枠を超え、顧客が大企業の物流DXを推進する上で直面する主要な課題(戦略策定、システム連携、人材確保)に対し、ワンストップで対応できる包括的な体制を構築している。
6.1. Hacobu Strategy(物流DXコンサルティング)
「Hacobu Strategy」は、物流DXコンサルティングサービスであり、データ有効活用支援、高度物流人材育成支援、業務AI化支援など、経営レベルでの物流DX戦略立案をサポートする 4。
このコンサルティングサービスは、MOVO導入後のデータ活用フェーズにおいて、顧客の経営層に対し具体的な改善提案を行う役割を担い、結果としてサービス利用の深度を高め、顧客との長期的な関係構築に寄与する。
6.2. Hacobu Solution Studio(物流DXシステムインテグレーション)
2025年7月23日(またはそれ以前)に開始された「Hacobu Solution Studio(ハコブ・ソリューションスタジオ)」は、HacobuがSaaSベンダーとしての成長を加速させる上で極めて重要なサービスである 12。
SaaS製品(MOVO)は標準化を基本とするが、大企業が持つ個社固有の基幹システム(商流情報)と連携させ、物流情報と商流情報を統合することがオペレーション効率化には必須となる 12。Solution Studioは、MOVO、Strategy、そしてシステムインテグレーションをワンストップで提供することで、多くの企業が抱える「導入したSaaS製品と既存システムとの連携ボトルネック」を解消する。このサービスは、「Fit to Standard」を基本としつつ、個社の強みや業界特有の要件に応じた個別カスタマイズにも対応することで、大企業顧客の確保と、MOVOプラットフォームの深い組み込みを実現する 12。
6.3. Hacobu Career(ロジスティクス特化型人材紹介サービス)
Hacobuは、2025年9月9日に、ロジスティクスに特化した人材紹介サービス「Hacobu Career(ハコブ・キャリア)」の提供を開始した 13。
物流改革を担う人材と企業をつなぐこのサービスは、業界全体の人材不足という構造的課題に対応する。これは、顧客に対する付加価値提供であると同時に、Hacobuが「DXの牽引役」としての存在感を確立し、業界全体の持続的な発展に寄与することを目指す戦略的施策である 13。
このDX包括支援体制(SaaS、コンサルティング、SI、人材)により、HacobuはSaaSによるストック収益に加え、StrategyやSolution Studioによる高単価な役務提供収益、そしてCareerによる新たな収益源を確保し、収益源の多角化と顧客単価の最大化を図っている。
VII. 競争環境分析、パートナーシップ、およびリスク評価
7.1. 競合他社分析とHacobuの差別化要因
物流DX市場には、動態管理システム(MOVO Fleetの競合としてDRIVE CHART、Cariot、SmartDrive Fleetなど 26)や配車管理など、各機能セグメントに競合製品が存在する。
しかし、Hacobuの真の競争優位性は、単一製品の機能優位性ではなく、以下の2点に集約される。
- ネットワーク効果によるデータ独占: 「MOVO Berth」が市場シェアNo.1を獲得し、日本のトラック物流データを大規模に収集していること。
- 業界全体最適化戦略: 収集したデータを基に、「MOVO X-Data」や「未来の物流共創会議」を通じて、個社最適化に留まる競合に対し、企業の枠を超えた業界全体の輸送効率化という高次の価値を提供可能であること。
これにより、Hacobuは技術面だけでなく、業界構造の変革における中心的地位を築き、後発企業に対する高い参入障壁を構築している。
7.2. 戦略的資本業務提携の評価:サプライチェーン統合への影響
Hacobuは、単なる技術開発だけでなく、サプライチェーンの中核プレイヤーとの戦略的な連携を通じて、事業の実現可能性を高めている。
戦略的パートナーシップと投資家の役割
| 戦略的パートナー/投資家 | 属性 | 主な関与・目的 |
| 三菱倉庫、鴻池運輸 | 大手物流事業者 | 物流インフラ・ノウハウ連携、投資を通じたプラットフォームの普及 |
| 豊田通商 | 大手総合商社/自動車関連 | デジタル技術活用、脱炭素社会の実現に向けた提携 |
| 三菱食品 | 大手食品卸売業(荷主) | MOVO X-Dataによる共同輸配送の大規模実証実験 |
これらの提携は、Hacobuが物流、商社、主要荷主といったサプライチェーンの多様なステークホルダーを取り込む能力と、プラットフォームの中立性の高さを証明している。特に豊田通商との提携における脱炭素化の目標 7 は、MOVO X-DataがCO2排出量の削減に貢献することで、事業の持続可能性と社会的意義を高めるという点で、戦略的に重要である。
7.3. 事業継続性・セキュリティとデータガバナンスへの取り組み
Hacobuは、社会インフラとしての信頼性確保に努めており、MOVO Berthの稼働率は2年連続で99.99%を達成している 21。
また、物流ビッグデータを扱う上でのセキュリティ体制を重視し、二段階認証の実装 16 や、導入検討時に情報システム部門が監査するためのセキュリティチェックシートを公開している 21。新経営体制では、物流クライシス解決を加速するために、データガバナンス体制の強化も推進されており 3、これは大企業顧客が安心してデータを預けられる環境を提供するための必須要件となっている。
7.4. 成長のボトルネックとなる潜在的リスク
Hacobuの成長戦略には高い潜在性がある一方で、以下のリスク要因が潜在的なボトルネックとなり得る。
- データ共有への抵抗: MOVO X-Dataが目指す企業間データ連携は、機密性の高い運行情報に関わるため、参加企業間の信頼度とHacobuの中立性に対する継続的な維持・検証が必要となる。
- 技術・人材の確保: MOVO AI LabやHacobu Solution Studioの高度なソリューション開発・提供には、優秀なAIエンジニアやシステムインテグレーション人材の継続的な採用と育成が不可欠である。物流DX人材の不足(Hacobu Careerのサービス開始の背景でもある 13)は、成長のスピードを左右する大きな要因となる。
VIII. 結論と将来展望
Hacobuは、物流の「2024年問題」を契機に発生した構造的な変革需要を背景に、SaaS提供者から、データとAIを武器に業界全体の非競争領域を最適化する「情報仲介者」へとその事業ドメインを拡大している。
8.1. Hacobuの長期的な企業価値評価
Hacobuの企業価値は、主に以下の二つの要素によって評価されるべきである。第一に、市場シェアNo.1の「MOVO Berth」が生み出す安定的かつ成長性の高いストック収益。第二に、この強固なネットワーク効果とデータ・フライホイールを通じて生み出される「業界最適化」ソリューション(MOVO X-Data、MOVO AI Lab)の実現可能性と、その潜在的な市場規模である。
同社は、2030年以降に自動運転が実用化される際、物流情報流通のデジタル化が不可欠になると見据えており 6、その共通基盤プラットフォームを構築することで、将来的に物流インフラにおける圧倒的な支配力を獲得する可能性を秘めている。
8.2. 成長シナリオの実現に必要な鍵となる要素
Hacobuが提示した成長戦略を成功させるために不可欠な要素は、以下の通りである。
- X-Dataによるブレイクスルーの実現: 三菱食品との実証実験などを通じ、MOVO X-Dataが実現する共同輸配送が、既存の課題を克服し、具体的なコスト削減効果およびCO2排出量削減効果を定量的に証明すること。これにより、プラットフォームへの参加企業を飛躍的に増加させることが可能となる。
- AI機能の市場浸透と標準化: MOVO AI Labが開発する高精度なAIソリューションを「MOVO Vista」などの全製品群に統合し、物流現場の業務効率を属人化に依存しない形で大幅に改善し、業界の標準機能として定着させること。
- 信頼性と中立性の維持: データの機密性とセキュリティを厳守し、戦略的パートナーシップやデータ共有の場(物流ビッグデータラボ)における中立的な立場を維持することで、企業が安心して機密データを預けられる、社会インフラとしての地位を不動のものとすること。
コメント