美しい映像、だけど…一見さんにはちょっと難解?
最近、「国の映画が観たい」という気分になって、選んだのが中国映画『紅楼夢』。場所は日比谷ミッドタウン内のTOHOシネマズ。日比谷のTOHOは実は初めてで、てっきり日比谷シャンテと同じ場所だと思い込んでいたのですが、行ってみたら全然違う建物でした(笑)。ミッドタウン日比谷って、上品で洗練された雰囲気がありますよね。
映画の第一印象──正直、退屈だった…
正直に言うと、観終わった後の感想は「つまらなかったな…」というもの。途中うとうとしてしまったくらい、物語に入り込めず、登場人物にもまったく感情移入できませんでした。
映像は確かに美しく、色彩や衣装などは中国古典の世界観をたっぷり堪能できる仕上がり。でも、その美しさが物語とつながっていないというか、「ただ美しいだけ」に感じられてしまったんです。登場人物もいわゆる“美男美女ぞろい”という感じではなく、淡々と進む場面に引き込まれることがありませんでした。
「紅楼夢」って、源氏物語みたいなもの?
原作についての知識は「中国の有名な古典文学」くらいしかなかったのですが、おそらく日本でいう『源氏物語』のような立ち位置の作品なのだと思います。
もし『源氏物語』を、予備知識なしに一部分だけ映像で切り取って観たら「よくわからないし、退屈」と感じるかもしれませんよね。
『紅楼夢』も、背景や人物関係、歴史的・文化的文脈を理解していれば「あの名場面をこう描いたのか…」と深く味わえるのかもしれません。
物語の内容も、リアルなのか幻想なのか、夢か現か…その境界が曖昧で、終始“のっぺり”とした印象。明確な起伏や展開が少なく、ストーリー性を求める一見さんにはやや厳しい作品だと感じました。
まるで「スルメ映画」とでも言うべきか──噛めば噛むほど味が出る、そんなタイプなのかもしれません。
若すぎる主役たちに厚みが感じられず…
主演の俳優たちがとても若く、演技もやや表面的に感じてしまいました。重厚な文学作品を映像化するには、もう少し経験や深みを感じさせるキャスティングでもよかったのでは?と思ってしまったのが本音です。
「面白さ」とは何か、自分にとっての映画とは?
今回の鑑賞を通して、「私は映画の何を面白いと感じるのだろう?」と改めて考えさせられました。
登場人物の心理描写やストーリー展開の抑揚、役者の存在感、文化的背景への興味…。そのすべてがうまく噛み合ってこそ、自分の中で“面白い”と感じるのかもしれません。
中国文化に触れられたという意味では◎
それでも、「中国文化にたくさん触れたい」という気持ちがあって観に行ったので、観たこと自体には満足しています。エンドロールには中国語にピンインが添えられており、国際展開を意識しているのかも?と興味深く感じました。
ちなみに、お客さんの入りは1/3ほど。落ち着いた雰囲気の中での鑑賞でしたが、「この作品を観に来ているのは、いったいどういう人たちなんだろう?」とふと気になったりもして。
もちろんです。『紅楼夢(こうろうむ)』は中国四大奇書の一つで、18世紀・清代の作家 曹雪芹(そうせつきん)によって書かれた大長編小説です。
物語は、貴族の贾(ジャ)家を中心に、美しくも儚い青春、愛、没落を描いたもの。登場人物は非常に多いのですが、特に物語の中心となる主要人物3名を挙げてご紹介します。
主な登場人物
1. 賈宝玉(ジャ・バオユー / Jiǎ Bǎoyù)
物語の主人公。
美しく繊細な青年で、名門「賈家」の嫡男。出生時、口の中に「通霊宝玉(魂と通じる不思議な石)」を持って生まれたという伝説的な存在です。
- 詩文や音楽、女性との交流を好み、官僚としての出世や社会的成功には興味を示さない。
- 感受性が鋭く、特に女性に対して強い共感力を持つため、女性たちとの関係が複雑。
- 物語全体の中で「夢」「幻想」「運命」などの象徴的存在でもある。
2. 林黛玉(リン・ダイユー / Lín Dàiyù)
宝玉のいとこで、悲劇的ヒロイン。
病弱で才気あふれる美少女。詩や文学に長け、知的で繊細な感性を持つ一方、嫉妬深くプライドが高いところもあります。
- 宝玉とは心の深いところで通じ合い、精神的には最も親しい存在。
- しかし、二人の恋は家の事情や運命に翻弄され、成就しない。
- 曹雪芹が描く“悲劇の美”を体現する人物。
3. 薛宝釵(シュエ・バオチャイ / Xuē Bǎochāi)
宝玉のもう一人のいとこで、もう一人のヒロイン。
美しく穏やかで、教養があり、実務能力も高い「理想的な女性」として描かれます。
- 林黛玉と対照的に、感情をあまり表に出さず、安定感のある性格。
- 宝玉との結婚相手に選ばれるが、宝玉の心が黛玉にあることを知っていても、黙って受け入れる。
- 「正妻」としての責任感を背負う姿は、古典文学における“賢妻”の象徴的存在。
補足
この3人の関係は、日本でいうと「光源氏・紫の上・葵の上」に例えられることもあります。
特に宝玉を中心に、黛玉と宝釵という二人の女性が対照的に描かれる構図は、古典的な「愛と運命」「理想と現実」のテーマを際立たせています。
おわりに
映像美は抜群ながら、物語性や演出の面では物足りなさを感じた今回の『紅楼夢』。
でも、たとえ作品自体が自分に合わなかったとしても、こうして異文化に触れる時間はやはり貴重だなと改めて思いました。
次は、もう少し予備知識を入れてから挑みたいですね。
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